イタリア南部の古代都市ポンペイで、約2000年前の建設現場跡が発掘され、古代ローマ人が用いた自己修復機能を持つコンクリートの原材料が初めて具体的に確認されました。この発見は、古代ローマの建築技術に関する従来の理解を大きく変えるものとされています。発掘調査を行った研究チームは、現場で見つかった石灰や火山灰、さらに特定の鉱物成分を含む混合物が、時間の経過とともに化学反応を起こし、ひび割れを自然に修復する仕組みを持つことを突き止めました。ローマコンクリートは、現代のコンクリートと比べて非常に耐久性が高く、海中構造物などで2000年以上も劣化せずに残っていることが知られていましたが、その製造過程の詳細は長らく謎に包まれていました。今回の発見は、ポンペイの建設現場という実際の作業現場の遺構から原材料の調合比率や製造工程の手がかりを得た点で画期的です。研究を率いた考古学者は、「これまでの理論や実験室での再現を超え、実際の現場で使われていた材料の組成を直接確認できたことが大きな成果だ」と述べています。古代ローマの建築技術は、当時の社会や経済の発展を支えただけでなく、現代の建築材料研究にも影響を与え続けています。今回の研究成果は、古代技術の再評価とともに、持続可能な建築材料の開発に向けた新たなヒントを提供するものと期待されています。
【背景と注意点】
古代ローマのコンクリートは、その耐久性の高さから「ローマンコンクリート」として知られており、長年にわたり研究対象となってきました。しかしながら、製造法の詳細は断片的な資料や現代の実験的再現に頼っており、実際の製造現場の遺構が発見されることは極めて稀です。今回のポンペイの発掘は、火山噴火によって一時的に埋もれたことで保存状態が良好であったことが幸いし、当時の建設現場の具体的な状況を知る貴重な手がかりとなりました。一方で、発掘調査は遺跡の保存や文化財保護の観点から慎重に進める必要があり、今後も継続的な研究が求められます。また、古代技術を現代に応用する際には、環境や安全性の観点から十分な検証が必要であることも留意すべき点です。
【今後の注目ポイント】
今回の発見を踏まえ、今後は古代ローマのコンクリート製造技術をより詳細に解析し、現代の建築材料開発に応用する研究が活発化すると予想されます。特に、自己修復機能を持つ持続可能なコンクリートの開発は、環境負荷軽減やメンテナンスコスト削減に寄与する可能性があり、建設業界からの注目も高まるでしょう。また、ポンペイ以外の古代遺跡でも同様の建設現場の発掘が進めば、地域や時代ごとの技術差や進化の過程も明らかになるかもしれません。読者は、古代技術の現代的価値や考古学の新たな発見に注目しつつ、持続可能な社会づくりに役立つ技術革新の動向を見守ることが重要です。
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【出典】
https://www.livescience.com/archaeology/romans/this-has-re-written-our-understanding-of-roman-concrete-manufacture-abandoned-pompeii-worksite-reveal-how-self-healing-concrete-was-made



